在庫はキャッシュフローを左右する

在庫の科目である商品や原材料は決算書の貸借対照表では棚卸資産にあたります。
棚卸資産は流動資産になり財務会計のルールでは1年以内に現金化する資産となっています。つまり、財務会計の世界では棚卸資産は“キャッシュ(=お金)”に近いものとされています。

経営者は、『在庫=キャッシュ』と考えているでしょうか?

「在庫は売れないとキャッシュにならない」。つまり、『在庫=キャッシュ』とは考えていない経営者が多いのが実情です。

在庫は売れないとキャッシュになりません。キャッシュだと他に活用することができますが、在庫のままだと “単なる物”でしかありません。また在庫をするにしてもキャッシュを減らして“単なる物”を仕入することになります。だとすると、在庫は売れる商品は多くそして売れない商品は少なくするのは当然です。
しかしながら経営者からよく耳にする言葉が、「欠品は絶対するな!欠品するぐらいなら在庫を多く持て!」だけです。
これで現場は経営者の考えが理解できるでしょうか?

在庫を持つためにかかるコスト

在庫はタダでは持つことができません。
あまり見えてこないのですがその他に多くのコストが掛かります。
在庫を管理するには、『仕入・保管・出荷』の業務が必要になります。
それぞれの業務で下の図のようなコストが掛かっています。
コストには在庫量に関係なく必要な固定コスト在庫量によって増減する変動コストがあります。

在庫を管理するための主な費用

仕入
発注業務
仕入れ、労務費、支払利息
入荷業務(受入検査、入庫)
労務費、光熱費
保管
(在庫)
保管業務(棚卸、置替え)
労務費、地代家賃、支払保険料、光熱費、棚卸減耗
決算対応(商品廃棄)
賃倒損失
出荷
ピッキング業務(出庫、出荷検査)
労務費、光熱費
出荷業務(配送手配)
労務費

それぞれ固定コスト変動コスト

不要な在庫を持つことで変動コストが多くなり、その分、利益率を下げてしまう、つまりキャッシュフローを悪くすることになります。
一度、自社のコストを計算してみてください。

以上のように在庫は会社のキャッシュフローを大きく左右する大切なものです。現場は指示されたこと理解して在庫管理をすることが役割です。経営者はキャッシュフローを考えて在庫をどのように持つかを決定し、それを社員に分かるように説明・共有することが仕事になります。

  • ※本コラムは、公開日時点の情報で記載しています。情報は今後変更または更新される可能性があります。
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執筆者: 米田 慎一 よねだ しんいち
経営およびシステムコンサルタント
外資系ソフトウェア会社で製造業および流通業に対して在庫適正化を目標とした在庫計画や需給調整のシステム導入に従事。
その後、2011年に独立。中小の製造業および流通業に対して在庫を適正化するためのコンサルティングを実施し、企業成長に貢献している。
株式会社インフォグロース 代表取締役。(https://info-growth.com/)

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